平成27年司法試験商法について色々と②


lawperson

設問2から再開しようか。

この問題は「第1取引及び第2取引の効力に関する会社法上の問題点」が聞かれてるんだよね。

問いに素直に答えるのが大事と日頃から自分に言い聞かせてきた良き受験生は当然第1取引と第2取引を別個に論じることになりそうだよね。



甲子

実際そのように処理したんですか?



lawperson

いや、答案構成段階では別個に検討してたんだけど、なぜか解答用紙に書き始めた段階では一体として処理し始めてた笑

僕は答案構成は回答の下書きとは捉えてなくて純粋に頭の整理のためにしか使ってないんだよね。

実際書き始めたらほとんど答案構成用紙は見返さない。

だからこういうことは良くあるんだけど、今回で結果的に両取引を一体に書こうと思ったのは以下の理由による。

第1取引と第2取引でそれぞれ取引されたのは洋菓子工場に係る不動産とP商標権である。

それぞれの取引の目的は洋菓子事業部門の売却にある。

不動産だけ譲渡されても商標権がなければ価値半減以下

商標権だけ譲渡されても設備がければお菓子作れない

こういった視点でもう1回両者の取引関係を見てみると時間的間隔が10日しか空いてないしその間に事業を営んでいた形跡もない

これはやっぱり両者を一体として見て欲しいってことなんじゃないかなという結論に至ったんだ。



甲子

これについては別個に検討すべきか一体に検討すべきかのどちらが正解かは分からない感じですよね。

でも別個に検討した場合、これらが単体で見ても総資産額の5分の1を超えるという要件(467条1項2号かっこ書き)を満たすと言えた場合には事業譲渡性を肯定できるんですか?



lawperson

それは事業譲渡の要件の解釈次第なんじゃないかな。

事業譲渡の定義は、

①一定の事業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産の譲渡し

②事業の承継

③競業避止義務

とされるけど、

このうち③は置いといて、②を要件とするか否かで結論が変わる気がする。

事業の承継が要件として必要ならば、不動産を譲り受けただけでは事業を承継したとは言えないし商標を譲り受けただけで事業を承継したということも難しいんじゃないかな。

だから、第1取引と第2取引を別個として扱う場合は②を要件から外す解釈をしないと事業譲渡に当たらず、「重要な財産の譲渡」にしか当たらないから取締役会の決議で足りることになってしまう(362条4項1号)。

②を要件とした上でこのような手続の潜脱を認めるのは許されないと考えるならば両者を一体的取引と見ることはできないかという視点が論理的な気がする。

逆に両者を一体として処理する立場に立ったとしてもなぜそのような処理をするのかの言及が不可欠だよね。外観上は別個の取引をあえて一体として取り扱おうとするんだからそれには説明が必要だ。



甲子

両者を一体として扱う場合は事業譲渡該当性は容易に肯定できますか?



lawperson

いや、この場合でも次の2点が問題となると思う。

ⅰ 事業の承継が認められるか

ⅱ 競業避止義務は要件か

ⅰ については、本件では甲社の従業員及び取引先が一旦甲社の下で関係性が清算されてるんだ。

だから事業を承継したとは言えないんじゃないかが問題となる。

これについてもその全部につき再度丙社の下で取引が再開されてる点を指摘して実質的に見れば事業が承継されていると論じることになるのであろう。

ⅱ については競業避止義務は効果であって要件ではないというのは知られた議論だから割愛するね。



甲子

設問2は事業譲渡性を肯定するだけで骨が折れますね。



lawperson

うん。

ここまで検討した上で更に「重要な一部」と言えるかを資料を用いて検討しなければならないし、

いずれも肯定した上で株主総会特別決議が不存在である点を指摘してこのことから明文を欠く総会決議を経ていない事業譲渡の効力の帰趨についても検討しなければならない。

論点盛りだくさんで、何より入り口(取引を一体と見るか否か)が難しいから難問と言えるのではないだろうか。



甲子

設問3はどうですか?



lawperson

設問3はとにかくモデルとなった平成24年の判例を知っているか否かが勝負を分けるんじゃないかな。

割当者が社外アドバイザーという点が本件の特殊性みたいだけど正直これをどう処理するかという点よりも正しい処理手順に乗れるかどうかが勝負だと思う。

すなわち、本来行使条件は総会特別決議で定める必要あり→総会特別決議による取締役会への委任は可能→一度取締役会が行使条件を定めたならそれを変更するには再度の総会特別決議が必要→取締役会でこれを行った点に瑕疵あり→当該瑕疵が無効事由に当たるかという流れだね。

特に設問3は配点が20点で最後の問題だから時間をがっつり割けた人は少ないだろうから、この辺りを押さえていれば少なくとも守りの答案にはなったんじゃないかな。



商法はこんな感じです。

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