平成27年司法試験商法について色々と①
lawperson
今日は商法について検討していこう。
今回の設問は3つで、
設問1が取締役の会社に対する損害賠償責任(423条)
設問2が事業譲渡(467条)の効力
設問3が新株発行の効力
だったね。ざっくり言えば
甲子
こう見ると典型論点の詰め合わせだったことがわかりますね。
改正絡みや、短答廃止による手形からの出題も予想されていたわけですが。
lawperson
そうだね。でも設問3は割と最近の判例の知識が問われていてそれも理解が難しい判例だったから、ここを詰めていなかった人は新株予約権自体の有効性を争ったり、新株発行の効力には言及していても行使条件について上手く処理できなかった人も多かったんじゃないかな。
それに設問1はそう簡単に任務懈怠を肯定できる事案じゃないしこれを肯定できても因果関係を有する損害額をどこまで認めるかという厄介な問題がある。
さらに設問2が今年の商法ではおそらく一番の難問で取引①と②の関係性をどう考えるかという入り口で躓くとそのままずるずるいっちゃいそうな気がするな。
甲子
確かに。
去年の商法が非常に難問だったのでそれに比べれば解きやすかったというだけでそこまで易しかったというわけではなさそうですね。
lawperson
まあ司法試験だしね。
じゃあ検討に移ろうか。
設問1で問題となるBの行動は大きく2つ。
乙社の陣頭指揮を執って洋菓子事業を関西地方へ進出した行動と甲社洋菓子工場Eを引き抜いた行為。
甲子
前者は競業取引規制(356条1項1号)の問題ですよね。
これ自体は出題予想がいろんな所でなされてたのでヤマが当たった受験生は多そうです。
lawperson
そうだね。
競業取引規制で問題となる典型論点は2つ。
「ために」の解釈と「事業の部類に属する取引」の解釈
今回ではこのうちの両方が問題となっている。
甲子
条文の解釈問題なので競業取引規制の趣旨から流していった方が良さそうです。
「会社の業務執行に関する強大な権限・事業の機密にも通じている取締役→その地位を利用して→会社に損害を与えるおそれ」
この当たりを指摘した上で、
「ために」は「計算」を意味する、会社の事業の部類に属する取引」は会社の実際に行う事業と市場において取引が競合し、会社と取締役との間に利益衝突を来す可能性のある取引
と解釈していけば良いと思います。
lawperson
本件の場合は後者はもうちょっと掘り下げて、現在は進出していなくても将来において進出される具体的な可能性が予見されるとかって基準を立てた方が今回の事案には適合してそうだね。
まず、「自己または第三者のために」と言えるかについてはBが乙社発行済株の90%を取得している→乙社の利益の9割=Bの利益という点を指摘する必要があると思う。Bは乙社監査役に過ぎないからこれだけでは弱いからね。あとここで乙社の計算じゃなくてB自身の計算という点に言及できれば損害以下の認定がやりやすくなる。
甲子
「事業の部類に属する取引」については、洋菓子部門の関西地方への進出を企図していただけなく実際にマーケティング調査会社に市場調査を委託して500万円の委託料を支払っている点が計画の具体性を意味していることになりそうです。
lawperson
うん。これらのことから競業取引規制を受けると言えるから重要な事項の開示と取締役会の承認が必要となる。
本件ではAとCに対して乙社株を取得したこと、今後乙社事業に携わることを述べているけどこれが上記要件を満たすといえるものかを認定する必要があるね。まあ満たすというのは難しいんじゃないかな。
甲子
これで任務懈怠を肯定出来るわけですね。
損害額は市場調査委託料500万円、乙社の営業利益の増額分800万円、顧問料の支払い毎月100万円がどこまで損害(Bが得た利益)と言えるのかが423条1項2項の関係で問題になりますね。
lawperson
委託料は因果関係の問題、営業利益増額分はBが90%株を有していることからどこまでをBの利益とするか、顧問料は競業取引をしたから支払いを受けているのか監査役の報酬として受けているにすぎないのかが問題となる(Bが監査役に就任及び陣頭指揮を執ったのが3月、顧問料の支払いも3月から、Q商標の独占使用設定を受けたのが4月)
甲子
Eの引き抜きについては忠実義務(355条)の問題ですね。
引き抜きという自由経済活動とこれを甲社取締役であるBが工場長という重大な役職にあるEを突然引き抜いたという点をそれぞれ勘案して忠実義務違反の認定をすることになりそう。
lawperson
あとはこれも損害額だね。1日当たり100万円相当の売上喪失×3日間をどこまで因果関係ある損害と見るか。
設問2以降はまた後日
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