平成27年司法試験刑事訴訟法について色々と



lawperson

今日は刑訴について検討したいと思う訳です。


甲子

初日の憲法の次が最終日の刑訴なんですね。


lawperson

その辺は気にしない気にしない。
ところで今年の刑訴はTKCの直前前項統一模試がミラクルを起こしたね。


甲子

私はその模試受けてないんです。
論点的中したんですか?


lawperson

論点というか問題が全体的に似てた。
具体的には、秘密録音、おとり捜査(司法試験では論じる必要はなかったが)、自白、伝聞までもが一致していた。
まあ、ヤマが当たったからってそれだけで合格できる試験じゃないのは周知だけど心に余裕は持てた人は多かったんじゃないかな。
それと同時に書くことの多さも分かってたから答案構成は20分強で打ち切って答案作成に入れたし。


甲子

設問1は強制処分該当性と任意処分の限界について書いていく感じですよね。


lawperson

そうだね。ここでもやはりあえて捜査①と捜査②を検討していると言っている以上両者を比較検討するのが大事だと考えた。
捜査①は、
自然に聞こえた会話を録音、会話がなされたのは室内じゃなくベランダ、通話時間が3分
捜査②は、
特殊な機械を使って無理矢理聞こえるようにした会話を録音、音声は室内のもの、録音時間は10時間
こんな感じで綺麗に対比できる。


甲子

でも捜査①については強制処分該当性を認めた人もいそうですよね。

lawperson

その場合は、会話が聞こえることとそれを録音することの違いを指摘してプライバシーの侵害が強いことを強調するんだろうね。
でも問題文に任意捜査の限界で使って欲しそうな事情が多くあったし、捜査②が強制処分該当させるのが正解筋っぽいことからしてもやはり捜査①は強制処分該当性を否定すべきだったのではないのかな。
ベランダが室内とは異なって公共としての側面も有している場所であることを強調すればプライバシー保護の要請は高くない→☓重大な権利利益の制約という流れも違和感ないしね。


甲子

私もそう考えます。
捜査②についてはX線の判例とかを意識してプライバシーの侵害性を論じればいいんですか。



lawperson
そうだろうね。後は最近問題になってるGPS追跡についても問題意識としては含まれているのかもしれない。
特殊な機械、プライバシーが高度に要求される室内、被疑事実に関する音声以外も厳選されずに拾われている、10時間という長さ

この辺りを指摘して検証に当たり無令状で違法というのが正解筋じゃないかな。



甲子

設問2の書くことが大量にある以上、設問1は出来るだけコンパクトに書くことが必要だった気がします。


lawperson

配点が明示されていないのが気になるけど、紙面と時間は設問2に割きたいよね。今年の問題は。

あと今年は強制処分該当性、任意捜査の限界、自白法則、違法排除、伝聞法則というちゃんと準備しとかないと冗長になりがちな論証を大量にする必要があったからこの辺りのコンパクトな論証をちゃんと準備している人が有利だった気がするな。

じゃあ設問2に移ろうか。



甲子

設問2は伝聞法則以外にも証拠収集上の問題点も論じろとありますね。


lawperson

この証拠収集上の問題点が非常に厄介だよね。
甲子さんはどう論じた?


甲子

本件文書及び本件メモは令状に基いて差押えられているわけですが、この差押え手続自体には違法性がないように思われます。
でも当該令状はそれに先行する乙の自白に基づいて発布されているわけですが、当該乙の自白は甲が自白したものと察してなされてます。そして問題文にこの甲の自白の任意性を否定する方向に導く事実が多くあったので、甲の自白の任意性から論じて連鎖的に本件差押えも違法にならないかを聞きたいように見えました。
でもこの考え方って論理的ではない気がするんですよね。


lawperson

図式化すると、
甲自白→乙逮捕、乙自白→本件文書、メモ差押え
って感じだよね。
甲の自白を叩けそうなのは問題文から読み取れる訳だけど、仮に甲の自白の任意性を否定できたとしてもそれは乙からみて第三者の自白が任意性を欠くというだけでこれによって本件差押えが直ちに影響を受けるということはなさそうなんだ。
例えば共犯者の自白を他の共犯者の公判で用いるときに、補強法則が適用されるかっていう問題があるけど、あの問題は共犯者の自白調書には伝聞法則は適用されるけど自白法則は適用されないことを前提としてるって言われてるよね。


甲子

じゃあ違法排除法則の中で甲の自白採取の違法性を論じていけばよかったんですかね。


lawperson

うーん。
でも本件甲の自白におけるQの働きかけは約束自白なんだよね。
約束自白を違法排除法則で切るのは難しいというのが学説だと思うんだけど・・・
この辺は未だにどう論じれば良かったのかわからないんだよね。他にも乙が甲の自白をしたことを察して自白していることからすれば端的に乙の自白の任意性を論じれば良かったようにも思えるよね。でもそれだと甲の自白の任意性欠如事情を使えないし。
この問題は次のような論じ方があると思うんだけどどれもが難があるように思えるんだよね。
①違法収集証拠排除法則で一元的に処理
 ←約束自白に違法収集証拠排除法則を用いるのは厳しいのでは
②甲の自白に自白法則適用→毒樹の果実
 ←木に竹を接ぐとの批判をもろに受ける
 さらにこれに加えて甲の自白→差押えとかではなくて甲自白→乙逮捕、自白→差押えだから甲自白は第三者自白であってこの点も問題になる
③乙自白に端的に自白法則適用
 ←甲自白の任意性欠如事情を使えない
④乙自白を甲自白の反復自白と見て任意性否定?
 ←甲自白の任意性を問題にでき、かつ毒樹の問題に踏み込まないがアクロバティックすぎ?乙に対して捜査機関が甲が自白した旨告げた事実はなく乙の自白も甲が知らないことまで述べていることからすれば反復自白と見るのは無理がある。
こんな感じで。


甲子

でも大半の受験生はとりあえず甲自白に自白法則を適用した上でそっからの現場思考って流れにしてそうですよね。
その点じゃ差は付きにくいのかも。


lawperson

じゃあ伝聞法則について検討しようか。
今回は要証事実を具体的に検討しろとの誘導が付されていたね。
要証事実をどのように設定するかが問題となる訳だけど、本権文書及びメモを無理に非伝聞として用いるために要証事実を特殊なものに設定するのは良くない気がするんだよね。
だから検察官主張の通りに要証事実は乙丙の共謀の存在でいいと思うんだけどあえて設問があのような問い方をしているということは他の要証事実を設定すべきだったのかもしれない。


甲子

本件文書が供述を内容とする証拠であってこれを乙丙の共謀の立証に用いるには内容の真実性が問題となると素直に考えたらなりそうですよね。


lawperson

うん。その点の指摘は必要だろうね。
でもここで、本件の特殊性、つまり文書の電話番号が乙の手書きであること、その電話番号がV方のものと一致するということ、文書から丙の指紋が検出されていることから修正をかけるべきなんだろう。
つまりこの3つの事情を合わせて用いれば、詐欺についてのマニュアルを用いてV方に電話をかけた行為について丙が何らかの関与をしていたということは本件文書それ自体から推認することができるから非伝聞と考えるのが素直なのかな。


甲子

でもそれって丙の指紋が乙が手書きした前後のいずれで付着したのかで変わりそうじゃないですか?
この点については本件では指摘されてないわけですが。


lawperson

このあたりは深く考えたらそうなりそうだよね。でもそこまでの考察が求められているのかが良くわからない。
次に本件メモについてはどうだろう。


甲子

本件メモの文字は全て乙の手書きであることが判明しているわけですよね。

だったら精神状態の供述として知覚記憶の過程を経ないから非伝聞と言えるんじゃないんですか。



lawperson

確かにこのメモが丙からの電話と同時並行的になされていてそれを書き留めたメモなら乙の精神状態の供述といえるよね。
でもそれはあくまで乙の内面についての関係では精神状態の供述に当たるのであって、これを丙との関係で用いる場合にはそれでは足りないのではないのかな。
つまり乙が本件メモを作成したことを丙が認識したことまでが立証できなければならないわけだけど、本件では丙の指紋はメモからは検出されてないんだよね。
だからやはり内容の真実性が問題となると言わざるを得ないんじゃないのかな。


甲子

そう考えると伝聞例外(321条1項3号)は満たすんですか?


lawperson

頑なに乙が証言拒絶をしていることから、例示説を取れば供述不能は肯定できそうだ。
あと、本件文書と本件メモを同時に用いて初めて詐欺マニュアルを丙が作成した、すなわち、乙丙の共謀が立証できると考えれば証拠の不可欠性も肯定できそうだ。
後は、特信情況だけど本件でこれを肯定できそうな外部情況は特に見当たらない気もするんだがどうだろう。


甲子

まあでも、伝聞法則については要証事実の設定次第では伝聞非伝聞の結論は変わりそうですよね。


lawperson

そうだね。刑事訴訟法の検討はこの辺りにしとこう。

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